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2018年8月14日のセブンルール。
三重県紀北町。
人口約16000人。
40%以上が高齢者。
買い物に不自由な”買い物弱者”が年々増加。
移動販売員、東真央(ヒガシマオ)27歳。
東真央のセブンルールとは?
1 呼び込み音は「ルージュの伝言」
朝6時。
東真央は仕入れのため卸売り業者を回る。
惣菜は母の泰子(ヒロコ)さんが手づくり。
惣菜の量は年寄でも食べきれる小分けサイズ。
朝8時、移動販売車が出発。
移動距離は1日100~130キロ。
およそ20カ所を移動。
目的地が近くなると音楽でお知らせる。
移動販売車は”まおのおつかい便”。
これはジブリの”魔女の宅急便”からきている。
だから、移動販売車の音楽は”ルージュの伝言”。
スーパーまで徒歩で30分の距離。
車がない人たちにとって移動販売車は救いである。
東真央は直接お客を家まで迎えに行くこともある。
販売のほかに電球交換など身の周りの世話もする。
なんでも屋でもある。
2 お客さんに携帯番号を教える
「ときちゃーん」
東真央が大きな声で玄関先で声をかける。
足が不自由な人には台所まで届ける。
就職活動中の大学3年生の時。
”買い物弱者”のニュースを見た。
これが移動販売をするきっかけ。
祖母の専属運転手をしていた東真央。
移動販売を良いビジネスと考えた。
当初、若い東真央は年寄に相手にされなかった。
今では利用者は増えた。
彼女の携帯がひっきりなしに鳴る。
お客さんからの電話である。
用がある時は電話をかけてもらう。
東真央は大根一つでも快く届ける。
3 暇な時間を作らない
午後3時。
移動販売が終了。
東真央は小さなスーパーへ行く。
東真央はこのスーパーの経営もしていた。
日中は母やパートさんが店に立つ。
移動販売が終わった後は東真央が担当。
スーパーが閉店する予定だった。
その後を東真央が引き受けたのだ。
経営は赤字である。
でもスーパーがなくなれば不便になる。
町のために働く東真央。
週末は家族が経営する居酒屋”ギブソン”でも働く。
「とにかく暇がいや」だと言う。
月曜から土曜まで朝6時から昼3時まで移動販売。
夕方18時までスーパー。
金曜から日曜の18時から22時まで居酒屋。
恋人を作る暇もない。
修学旅行以降、東真央は旅行をしたこともない。
4 お客さんは下の名前で呼ぶ
「とっちゃーん」と東真央に呼ばれる男性。
大西俊明さん64歳。
4年前から移動販売車を利用。
現在一人暮らしの大西さん。
東真央を孫のように可愛がっている。
販売後。
大西さんちの台所でパンを貰う東真央。
大西さんが焼いたパン。
これが朝食。
「とっちゃん」は大西さんの下の名前としあきのこと。
東真央は大西さんいがいのお客さんも下の名前で呼ぶ。
親近感を感じてもらう為である。
5 カラオケの選曲は昭和の曲
黒のタンクトップとパンツ。
いつもと違う東真央。
化粧も濃い。
この日は公民館でカラオケ大会。
観客は300人。
東真央には応援団から声援。
歌うのは、”for you”
昭和57年の高橋真梨子の曲だある。
町にはカラオケボックスはない。
カラオケはスナックで歌う。
平成生まれの東真央。
だが、平成の曲を知らない人は多い。
お客さん全員が知っている曲=昭和の曲。
東真央は昭和の曲ばかり歌うようになった。
6 亡き祖父母の家に住む
平屋の一軒家に一人暮らししている東真央。
徒歩3分の場所に実家がある。
元は祖父と祖母の家だった。
3年前に祖父が亡くなり、
昨年、祖母も亡くなった。
町営住宅である。
住む人がいないと取り壊される。
仏壇を守る為に住んでいる。
祖母は移動販売を応援してくれた。
残ったものは祖母が全部買ってくれた。
あとから知ったのだが、近所の友達に配っていた。
祖母を助けたい。
それが東真央の原点なのだ。
7 別れの際は「行ってきます」と言う
大学卒業後に始めた移動販売。
東真央は27歳になった。
結婚して子供ができたら…。
後継者を心配している。
利益は月10万円。
後継者探しは難しい。
4年前から利用している鈴木さん夫婦。
ほぼ毎日惣菜を買っている。
なるべく辞めないでほしいと考えている。
足が悪くて遠くに買い物に行けない。
「アノ人を頼らな、やってけえへん」
お客さんのそばを離れる時、
東真央は「行ってきます」と言う。
お客さんは家族のような感覚。
大事な存在になっている。
できるだけのことをしてあげたいと思っている。
始める時は想像もしていなかったこと。
「人から必要とされる、それも給料」って素敵だな。
でも、これって行政が考える問題のような気がする。
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