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2018年5月15日のセブンルール。
元幼稚園の先生。
シングルマザー。
そして、今はパン職人。
地明真希のセブンルール。
営業は土曜日だけ
食パン専門店、”利”。
日光市野口。
ぽつんとあるパン屋さん。
土曜に行列ができる。
1時間くらいで完売することもある。
”利”の営業日は土曜日だけ。
それには理由がある。
職人は地明真希一人だけだから。
一週間のスケジュールはこうだ。
- 日曜 事務作業
- 月曜 コフィチュール作り
- 火曜 オフ
- 水曜 仕入れ
- 木曜 スコーン サンドイッチ作り
- 金曜 パン作り
- 土曜 営業日
- パンを作るのは木曜の深夜から。
わずかに仮眠をして約16時間作業を継続。
パン生地を分割・丸め、成型、二次発酵。
同じ室温と湿度でも焼きあがりは違う。
1 耳まで美味しく
地明真希のパンが焼きあがった。
ほんのりキツネ色。
角に白い線ができている。
発酵や焼き加減が完璧でないと出ない線。
美味しさの印。
地明真希が作る食パンの焼き色は薄い。
焼き過ぎていないので、耳が柔らかい。
子供も喜ぶ美味しさである。
「耳も同じように食べてほしい」
地明真希はパンの耳に拘った。
生でもダメ、焦げすぎてもダメ。
バランスと温度と時間に苦労した。
その結果が今の食パンである。
2 焼き立ては売らない
焼き立ての食パン。
とても美味しそうである。
地明真希は焼き立てのパンを店頭に出さない。
食パンを扇風機で冷ます。
一気に冷ますことでパンの中の水分を閉じ込める。
これでしっとり、モチモチの食感を作る。
冷めた時に美味しいパンが本当に美味しいパン。
3 機械をピカピカにする
地明真希の亡くなった父親。
土木職人だった。
工事中の事故で他界している。
口数は少なかった父親。
レーズンパンが好きだった。
父親が亡くなった後、地明真希はパン作りに打ち込んだ。
父親の死から逃れたかったのだ。
独学で研究すること3年。
2013年5月食パン専門店をオープン。
店名は父親の名前”利男”から一字をもらった。
地明真希には今も大事している父親の言葉がある。
「機械を大切にしないといい仕事はできない」
徹夜でパンをやきあげた後、
地明真希は機械を約1時間かけて磨き上げている。
4 箸置きのセットは息子にやらせる
夕方、彼女は息子が待つ自宅のキッチンに立つ。
箸置きのセットは息子が行う。
食事をする前に箸置きと箸を置くこと。
それで今から食事だよというスイッチが入る。
そうすると息子の心の中にもいただきますという言葉が芽生える。
ごちそうさまっていう気持ちにもなる。
5 仕入れの帰りは祖母におやつを届ける
食パンと並んで人気なのが利のサンドイッチ 370円から。
たっぷりの野菜とフルーツを挟み込む。
その具材は毎週水曜日、土地のものを直売所で仕入れる。
帰りにもいつも母が経営する美容室に寄る。
そして毎週この時間、近くに住む祖母99歳もやってくる。
祖母におやつを渡す。
この日は、豆かん。
祖母は美味しそうに食べる。
祖母の雰囲気をもらうだけで光をあびるような気持になる。
いつも仕事に追われてギスギスしている自分が一瞬ほどける。
祖母から元気を一杯もらう。
水曜日は元気を仕入れる日。
6 食べる人全員と言葉を交わす
木曜深夜から僅かな仮眠だけでパンを焼き続ける。
土曜の朝9時、この日も開店前から行列。
パンは1時間で完売。
お客さん一人一人に声をかける。
わざわざ、自分の夫を紹介する為に来店するリピーターもいる。
接客し、顧客と触れ合うことで元気を貰う。
自分の仕事が誰の為になっているのが解る。
それが来週への力になる。
毎週日曜は母とお出かけ。
母と過ごす時間も大切にしている。
しかし、仕事は一人でする。
地明真希にはたった一人でパンを作り続ける理由があった。
たった一人で作り続ける理由とは?
7 利は誰にも渡さない
地明真希一代で築いて地明真希の代で終わらせる。
その理由は独学でパンを研究してきた記録ノートにあった。
この頃のパンは今見ると不味そう。
でも、この経験があって今がある。
その記録ノートには亡くなった土木職人への父へのメッセージが。
亡くなった父へ、こんなに今は頑張っているよと見てもらいたい。
自分も父と同じ職人になったのを見届けてもらいたい。
父は、とにかくおひとよしで仕事には愚直に向かう職人だった。
この父への色々な思い。
店が出来上がるまでの葛藤。
これらのすべてがあっての食パン専門店“利“。
だから、利は自分だけのもの。
彼女は今日もパンを焼く。
打ち込むほどに父に近づけると信じて。
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